COLUMN
コラム
2020.07.14
あまり住宅設計の専門家の間での議論としては、聞こえてきていないのですが、住まいのLDKに求められる機能が急激に変わりつつあります。そのことを住宅の設計者たちは、まだあまり認識していないように思います。
一昔前は、リビングにテレビがデンと据えられていて、家族みんなでテレビを見るといった光景が一般的でした。リビングが、家族のコミュニケーションの場であり、家族の絆を創る場であったのです。
それが、最近、急激に変化しつつあります。背景は、スマホやタブレットの普及です。最近の10歳代の若者は、ただテレビだけを見るのではなく、テレビを見ながら、同時にスマホでtwitterやLINEでコミュニケーションをとる。さらには、テレビを見ながらタブレットで同時に別なドラマを見るといったことが当たり前に行われています。
これを「サイマル・ビューイング」というのだそうです。子どもたちがリビングでそのような過ごし方をするとなると、リビングは、もはや家族のコミュニケーションの場ではなくなりつつあると言っても言い過ぎではないでしょう。
家族それぞれが、リビングで、それぞれの端末を個々にいじって過ごす。そういう光景が当たり前になりつつあります。
そうなると、家族のコミュニケーションをとる空間としての住宅のあり方、間取りのあり方も変化しなければならないのです。間取りなどを考える上で、その視点を持つかどうかは、これからの住まいづくりにおいてとても重要です。
リビングが、家族がそれぞれで過ごす場に変容していくとなると、家族が顔を合わせ、コミュニケーションをとる場として、ダイニングの重要性が増してきます。
確かに、子どもがある年齢以上になると、家族がそろって食事をとる機会は減っていきます。でも、それでも、たとえみんなが揃わなくても、何人かで食事をとりながら、コミュニケーションをとる場としての重要性は、リビングに対して相対的に重要になっています。
また、別な機会に触れたいと思いますが、実は中学生くらいまでは、子どもが勉強する場としてのダイニングスペースもとても重要なのです。勉強ができる子どもは、自室にこもるよりも、ダイニングスペースで勉強している傾向があるようです。それについては、改めて触れますね。
さて、いずれにしても、ダイニングが家族のコミュニケーションをとる場、家族の絆を創る場として重要性が増している以上、住宅を計画する上で、そのことを意識して、間取りなどを考えることが重要です。つまり、ダイニングスペースをとても居心地のいい空間、居心地のいいダイニングセットを置くことにより、家族、特に子どもが自然と集まる空間にすることが大切なのです。