COLUMN
コラム
2020.07.24
家をまるごと断熱リフォーム目次 [非表示]
我が国の一般的な住宅の気密・断熱性能は、先進国中で、ダントツで最低の水準に留まっていることをご存知でしょうか?
例えば、日本の住宅では、冬に結露が生じるのが当たり前ですが、欧州では結露が起きると施工者は責任を問われてしまいます。つまり、結露が生じることのない気密・断熱性能が要求されているんですね。
それくらい、要求されている気密・断熱性能のレベルが違うんです。
これから、住まいづくりをお考えの方には、ぜひ知っておいていただきたい知識です。
我々日本人の多くは、我が国は省エネ先進国だと思っています。ところが、実は諸外国からはそうは見られていません。例えば2017年には、ドイツ・ボンの気候変動枠組み条約第二十三回締約国会議(COP23)会場で、世界の環境保護団体で組織する「気候行動ネットワーク」から、日本は地球温暖化対策の前進を妨げている国を指す「化石賞」※1を受賞してしまっています。諸外国からは、省エネや省CO2への取り組みが遅れている国であると、非常に厳しい目で見られているのです。
とりわけ取り組みが遅れているのが、住宅・建築分野です。日本もパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、採択されたパリ協定を採択していることは多くの方がご存知だと思います。日本は、パリ協定の枠組みを受けて、2030年までに2013年比で、温室効果ガス排出量を26%削減することを国際的に約束しています。ここで注目したいのが、日本の約束草案※2の部門別の削減目標です。産業部門の6.5%削減、運輸部門の27.6%削減に対して、オフィスビル等の非住宅建築を指す業務その他部門が39.9%削減、住宅における省CO2を指す家庭部門が39.3%と、住宅・建築部門が突出して大きな削減率になっています。これは政府が、住宅・建築物の分野の省エネ・省CO2への取り組みが遅れており、削減の余地が大きいと考えていることを示していると言えます。地球温暖化対策の取り組みは大切なことですが、ここでは「各家庭で積極的に省CO2に取り組みましょう!」と声高に訴えたいわけではありません。ただ、これから住まいづくりを進めようとしている方々に、日本の新築住宅の性能水準が他の先進国に比べて大幅に劣っており、エネルギーコストの問題だけでなく、私たちの多くは、健康、快適性、QOL(Quality of Life)も損なう環境に住んでいることを認識していただきたいと思っています。
欧米などのほとんどの先進国には、住宅の省エネ基準や断熱性能の基準等が定められています。表に整理したように、米国や欧州の国々では、省エネ基準に適合していないと戸建住宅も新築することができません。また、お隣の韓国では、500㎡以上の住宅建築物の新築等には、やはり省エネ基準への適合義務が課されています。日本でも、省エネ基準は定められています。また、2,000㎡以上の非住宅建築物への省エネ基準への適合義務が2017年からやっと始まっています。
ところが、現時点では住宅への省エネ基準適合義務はありません。(2020年までに段階的に義務化してくことが閣議決定※3されています。)
省エネ基準適合義務がないため、国土交通省の公表資料※4によると、マンション等の共同住宅の省エネ基準適合率は、図のとおりです。直近でも、新築住宅の約半分は省エネ基準に適合していません。また平成27年度の新築戸建住宅の外皮基準(断熱性能)への適合率は、58%※5にとどまっています。断熱性能の低い住宅がいまだに大量に供給され続けられているのが現状なのです。
つまり家を建てる際には、建築主(消費者)がよほど意識しなければ、気づかないうちに省エネ基準に満たない低い性能の家になっている可能性も高いので注意が必要です。
最近は、中古住宅を購入して、リノベを行って住む方が増えています。でも、既存住宅の気密・断熱性能は非常に低いので、夏暑く、冬寒く、結露が生じる住宅であることを覚悟することが必要です。