TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
あれはまだ、私が入社一年目のときのこと。ご両親と一緒にお住まいの、50代ぐらいの女性のお客様からご依頼をいただいた。お住まいは二階建ての一軒家、築年数は30年ほどであった。
最初は、洗濯機の下にある防水用洗濯パンの交換を検討されていた。ただ、雑談を交えながらお話を伺っていくと、「実は、洗面所が寒くて……」「床が沈んじゃうところがあるのよ」「介助が必要な父のためにバリアフリーも検討したい」などと、お話が広がっていった。
そこで私は、「せっかくのリフォームですから、不満なところや改善したいところなど、可能な範囲で取り組んでみませんか?」と提案した。最終的には、大きなリフォーム工事をまかせていただけることになった。
しかし、新人の私にとって、これほど大きなリフォームは初めての経験である。そのため分からないことも多く、先輩たちに助けていただきながら進めていき、無事に工事を終えることができた。
大きな変更点としては、お父様の介護に必要な設備を二階から一階に移したこと。そうすることで、お父様が浴室に入っているときなどでも、すぐにお世話できるようにした。また、キッチンからは遠回りをしないといけない作りだったので、キッチンから直接、浴室や洗面室に行けるような扉も用意した。
介護のための利便性を考慮することが、今回のリフォームの大きなポイントである。工事が終わると、介護にご苦労されていたご依頼主様はとても喜んでくれた。
その後、しばらくすると、お客様から「メンテナンスカード」の返信があった。メンテナンスカードとは、定期的に「その後、不具合などはございませんか」などを聞くためのお手紙である。「今のところ大丈夫です。ありがとう」といった内容が多いのだが、そのお客様は、「本当に快適に使わせてもらっています」という事柄を記してくれた。
また、一カ月ほど前にお父様が亡くなられたこともお伝えいただき、「父も、最後まで快適に使っていました。本当にありがとうございました」との文面が。私はその手紙を呼んだとき、お役に立てたのだと思い、本当に嬉しかった。
最も評価していただいたのは、浴室を交換したこと。それまでは入り口に段差があり、浴槽のまたぎも高く、介助をしながらでないと入浴できない状況だった。その段差をなくし、またぎを下げるなどの工夫によって、お父様はひとりでも入れるようになったとのこと。
もともとお父様は気難しい方で、お打ち合わせをするときも「父がいないときに……」とご依頼主様から言われて、対応していた。リフォーム時にも、お父様には施設に移ってもらい、その間に工事をした。
それでも、工事が終わった後にお聞きすると、「とても満足した」と仰ってくれたそう。またお母様も、お会いするたびに「本当に感謝しています」と言ってくれた。
リフォームというのは、お客様ごとにやりたいことが違う。そのため私は、「他の方はこうされていますよ」「それが人気の理由は◯◯という点にありまして……」などのお話しつつ、お客様が本当に求めているものを感じ取り、提案することを心がけている。
そして、そのときには、デメリットとなる部分、つまり「それではないものを選ぶ人は、どうしてなのか」というところもあわせてお伝えする。メリットとデメリットの双方をお伝えすることが、お客様のためになると思うからだ。
そのような姿勢を、私は当初も今も、貫いている。
私たちはどのような場面でも、プロとしての意見を求められる。そのうえで「こうしたほうがいいですよ」「ああするのはいかがですか」などのアドバイスを提供するのが仕事である。お客様が話すことをそのまま見積りに起こすのではない。お客様との対話が大事なのだ。
これからも、さまざまなお客様が大切にしていることを、もっともっと吸収し、よりお客様に満足していただきたい。そして、お客様が心から欲しいと思うようなご提案を、今後も追求していきたいと思う。