TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
きっかけは、「吊り戸棚の交換」というピンポイントのものだった。しかし、そのあとお話を伺っているうちに、それ以外にもいくつかの悩みがあることがわかってきた。
そのお客様のお住まいは、少し変わった間取りをしていた。
扉を開けるとすぐ目の前に天井まで届く高さの収納があり、それが、ダイニングとリビングを分ける間仕切りとしても使われていた。
キッチンはL字型で、全体の間取りからすると、やや使いづらいと感じていたようだ。
また、収納・キッチンがともに濃いブラウン色だったこともあり、室内全体の印象を暗くしてしまっていた。
そういったことから、収納の使い勝手が悪く、部屋全体の印象が暗いことが本来の悩みで、それらを解決することが本来のご要望だったのだ。
聞くと、それらの家具や間取りは、他界されたお母様がお選びになったとのこと。お客様は「なぜこんなものを作ってしまったんだろう……」と苦笑いされていた。
そこでわたしは、まず、使い勝手が悪く感じられている原因や、部屋の印象が暗くなっている原因をひとつひとつ説明させていただいた。
そして、「収納を全部とってしまい、キッチンとダイニングとリビングをひとつの部屋にして、L型キッチンは長いI型キッチンにするのはいかがでしょうか?」と提案した。
お客様がわたしの提案を受け入れてくださって、無事に施工が完了。その数ヶ月後、再び訪問する機会があった。
そのとき、リフォーム後、お客様がしばらく暮らしたお宅を見せていただくと……部屋に入った瞬間の印象が、以前とあまりに違いすぎて、わたし自身が驚いてしまった。
リフォーム後にお客様が新調した明るい色合いの家具の効果もあり、以前と見違えるくらい明るい部屋になっていたのだ。
お客様は何度も何度も「明るくなって嬉しいです。ありがとう」と喜んでくださった。
わたしはそれを聞いて、純粋にとても嬉しかったのだが、それだけでなく、お客様ご自身が、リフォーム後にさらに色付けをして、自分色に染めていかれたことにも、なんとも言い難い嬉しさを感じた。
リフォームをした後に、お客様が色付けをして、毎日の暮らしを彩っていく─。
そこにわたしが携わることができ、喜んでいただけたことは本当に嬉しく、精一杯やってよかった!
と心から思えた。
リフォームの現場では、「古くなったから交換する」というご要望が多いものだが、機械的に取り替えをするのでは、本来ではないのかもしれない。
大切なのは、「それによりお客様の暮らしがどう変わっていくのか」ということ。
これからも、お客様の未来に手を当てていける仕事をしていきたいと思っている。