TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
「キッチンを新しくしてほしいんです」
夏の日差しが日毎に強まっていく7月頃のこと。50代くらいの女性がそのような相談に訪れた。話を聞いてみると、現在はお母さまと一緒に二人で一戸建てに住んでいるとのことだった。
「もう50年ぐらいの家なんですが、前に大掛かりなリフォームをしまして……」
リフォームを経て住まい環境は良くなったようだが、キッチン周りは手つかずの状態。それで、今度はキッチンも良くしたいと思われたとのこと。
「子ども独立していますし、昔のようなキッチンはもういらないんです」
お二人なので、広々とした2階建ての住まいは快適なのだが、たしかに台所は昔のままだった。
私の中に、キッチンをリフォームすることで、お客さまの暮らしがより良くなるイメージが広がり始めていた。
「とくに、どのあたりをリフォームされたいとお考えですか?」
「そうですね……、まずは食洗機かな」
大型の食洗機は、使い勝手を考えても役目を終えているようだった。そこで私は、思い切ってキッチン全体のリフォームを提案した。お客さまは少しずつ乗り気になり、「そうしましょう!」と仰ってくれた。
「でも、タイルは変えたくないんです。それから、吊戸棚も……」
キッチンに使われていたタイルを、お客さまはとても気に入られていた。また、使い勝手がいい吊戸棚にもこだわりがあった。
私は、タイルや吊戸棚へのこだわりについて話すお客さまを見て、「もしかしたら、子どものときから使っていて、愛着があるのかもしれないな」と考えた。そこで、既存のものを残して使えるように、キッチン下台の交換を提案した。
また、職人さんにも来ていただいた。具体的なお話をしてもらわないと、お客さまのイメージは固まってこない。私から話すより、職人さんが実際の工事内容を説明しながら話したほうが、リフォーム後の姿を想像しやすくなる。
「なるほど、そのようになるんですね。それなら大丈夫です」
よりイメージ通りのリフォームを行うために、ショールームにも来ていただいた。そこにはさまざまな設備機器の実物がある。それらを見ていくうちに、お客さまの目はどんどん輝いていった。
「実際の設備を見せていただいて、なんだかとても楽しみになってきました!」
夏頃に始まったお打ち合わせも、秋口には工事が始まり、無事に工事が終わった。食洗機は新しくなり、収納は格段に使いやすくなった。とくに開け締めが便利になったところは、お客さまにも喜んでいただけた。
新しくなったキッチンを見て、お客さまは「設備関係も使いやすくなったし、掃除もしやすくなったし、リフォームして本当に良かったわ」と笑顔で話してくれた。その姿は本当に嬉しそうだった。私も心から喜んだ。
そして、話は工事のことにまで及んでいった。
「それにしても、御社の職人さんはいい仕事をしますね。おかげで大切なタイルと吊戸棚を、そのまま残すことができました」
私は誇らしい気持ちで、リフォーム後の住まいを眺めていた。