TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
以前、会社の代表をされている50代の方から、リフォームの相談を受けたことがある。当時、わたしが未熟だったこともあり、いろいろな点を注意されたものだ。
しかし、時間をかけて話を聞き、一緒に内装材を選んだり都心のショールームに足を運んだりするうちに、「寺もっちゃん」と呼んでいただけるほどの間柄になった。私と同世代である娘さんの話をすることもあった。
また、わたしが「これってこういうことですか?」と聞き、それが伝えたいニュアンスと違うときには突っ込んでいただいたりしながら、徐々に信頼していただけるようにもなった。最終的には、リフォームの内容にも満足していただけた。
リフォームが終わったとき、「寺もっちゃんにお願いしてよかったよ」「よく面倒見てくれたから頼んだんだよ」と言われたことを、今でも覚えている。見積りの書式まで細かく見る方だったのだが、最後は大変ありがたい言葉をいただけた。わたしにとって大切な経験である。
思い返すと、入社当時のわたしは社会人になり切れておらず、クレームをいただくことが多かった。依頼書の内容に漏れがあったり、連絡の不備や上司に聞けばすぐに解決することでも遠慮してしまったりすることがあった。それで、お客様への連絡が遅れることも多かった。
もともと他人と仲良くなるのは得意である。そのため、多くのミスは深刻な状況にならなかった。だから、ひとつひとつのミスに楽観的になっていたのだろう。
そんなある日、自分の考えを変えるクレームをいただいた。それは、わたしが取り寄せる製品を間違えたときのことだった。お客様にお詫びをすると、「あなたからしたら複数案件のひとつかもしれないけど、わたしからしたらとても大事なリフォームなの」と言われた。その言葉は、今でもわたしの記憶に刻まれている。
原因は単なるミスではなく、お客様への接し方や考え方そのものに対する、自らの甘さであった。そのクレームによって、楽観的に考え過ぎていた自分に気がついた。表面上の仲の良さだけでなく、ひとつひとつの仕事に責任をもち、信頼関係で結ばれたお客様との良好な関係性をきちんと築くことが、何よりも大事なのだと思うようになった。
どれほど仲が良いお客様との関係性も、わずかなミスによって失われてしまう。入社からほどなく受けたそのクレームは、わたしに責任感を植え付けてくれた。
それからは、たとえお客様から「任せるよ」と言われても、鵜呑みにするのではなく、しっかり向き合って決めるようにしている。工事日にお客様がいないこともある。だから、あらかじめ決めておく。お客様が曖昧な返答をしても、自ら先導していくよう心がける。
そのような心構えできるようになったのも、入社したての頃にいただいた、「あなたからしたら複数案件のひとつかもしれないけど、わたしからしたらとても大事なリフォームなの」という言葉のおかげだ。
お客様に信頼していただければ、最後の「ありがとう」は、より大きな意味をもつ。入社当時の「お客様と仲良くしたい」という発想は今、「お客様と信頼関係を構築する」に変わった。その土台となっているのは、お客様に満足していただきたいという気持ちと、仕事に対する責任感である。