TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
ご主人はバーテンダー、奥様はご自宅で書籍関係のお仕事に従事。
そんなご夫婦が来店されたとき、わたしはお話を聞きながら、「自分と感性が近いかもしれない」と思った。「こんな家に住みたい」「こんな完成形を求めている」といったフィーリングが、自分と近いように感じたのだ。
詳しく話を聞いてみると、小さなお子様がふたりいるとのこと。「料理しているときに子どもの様子を見ていたい」「リビングではこんな感じでくつろぎたい」などのご要望もいただいた。マンションは築35~40年ほど。壁で支えているタイプのマンションは、壁そのものを変更することができないため、床、天井、水まわりなどを変えることにした。
シンプルな内装ではあったものの、DIYでさまざまな工夫が施されている。システムキッチンには、使い慣れている家具を入れられるよう、一定の空間が設けられていた。
また、部屋のドアは両開きで、奥様が自宅での仕事に専念できるように工夫されていた。さらに壁は、クロスではなく白く塗装し、寝室の床は黄色のタイルカーペットが敷かれている。まるで、これからさらに発展していくような、そんな物件だった。壁をキャンパスに見立てて、お客様の色に染めてほしい。そのような想いが強くなっていった。少なくとも、余計な色はいれたくない。それが住宅を、お客様ならではのものに近づける秘訣である。
寝室のタイルカーペットをお客様と一緒に貼り、本棚は下地だけ補強して、棚板は量販店で購入したものを釘打ちする。そのようにして、引き渡した後も好きなように変えていけるよう工夫した。月日が経ち、1年後、2年後、3年後と少しずつお客様の色に染まっていく。まるで一緒に住む家をつくるような、そんな感覚のリフォーム案件であった。
ご要望に沿ったリフォームができたおかげで、お客様にも大変ご満足いただけた。「この家で子供の成長を見られるのが楽しみです」。お客様の喜ぶ姿を見て、これからもより良いリフォームをしたいという想いを強くした。
もともとわたしは、大学で生産工学を専攻していた。ただ当時、付き合っていた女性が建築学科で学んでおり、ドラフターで図面を引いているのを見てかっこいいと思った。そこで、建築学科に編入しようと教授に相談したところ、「編入せず、就職してから建築を学んでも遅くはない」と言われ、就職後も建築に興味を持ち続けることにした。
大学卒業後は、建築系の商社に勤めた。しかし商社は、商品を右から左に流すのが主な仕事である。メーカーから仕入れて工務店や建設会社に卸したとき、お金のことがメインになってしまうのが苦手だった。そこで、商社時代にリフォーム事業部を立ち上げた。
その後はリフォーム系のメーカーに転職。さらに、建築知識を深めていきたいと思い、デザインを重視した新築物件を取り扱う会社に就職した後、ホームテックの代表に出会った。
わたしは、根っからの建築好きなのだと思う。建物は、一生のうちに一度、建てられるかどうかというものだ。ただ理想の建築は、3回経験しないと実現できないと言われている。3回目でようやく、自分の好みにマッチした家が建てられるということだ。それを何回も経験できる建築の仕事は、やりがいが大きいと思う。
また、数千万円もする建物を設計し、プランを任せてもらえることも魅力的である。引き渡すとき、心から喜んでいただけると、自分も嬉しくなる。まさに最高の瞬間だ。お客様が喜び、子どもたちが走り回っている姿は、筆舌に尽くしがたい。「作って良かった」と心から思えてくる。
リフォームのきっかけは、「老朽化に伴う不具合が発生したから」「子どもたちの成長とともに家を変えたい」など、人によってさまざまだ。それでも、お客様との関係性は長きに渡って続いていく。そのためリフォームは、建築業ではなく、サービス業だと思う。わたしたちはサービスに精通しつつ、建築のプロでなければならない。
お客様の要望を、一本の線にまとめていく。そして真っ白なキャンパスを、お客様の色に染めていく。それがわたしの仕事である。