TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
「大勢の人が集まれる住まいを作りたい」。
そのようなご要望をいただいてスタートしたリフォーム案件。二年ほど前にご主人が亡くなられ、少しずつ落ちついてきたタイミングでのご相談だった。ピアノの先生をされている50代の奥様と、バンドでドラマーとして活躍されている20代の息子様の二人世帯にとって、理想の住まいを作るのが目的だった。
音楽関係のお仕事をされているということもあり、1階部分は防音設備が備わった鉄骨造の業務スペース、2階部分は木造の住居スペースとなっており、今回のリフォームの対象は二階部分。70平米ほどの3LDKを、いろいろな人を招いてホームパーティーなどができる空間にしたいとのこと。
現状の課題としては、部屋の数が多いことと、収納が足りないという二点に集約されていた。部屋の数を少なくして広いスペースを確保しつつ、収納を充実させれば、気兼ねなくお客様を呼ぶことができる。たとえば、演奏会なども気軽にできるようになれば理想的。そうなると、見た目も重要である。
ただ、柱を抜いてリフォームするのが難しかったり、スペースが取りにくかったりするなどの問題もあった。そうした問題をクリアしつつ、構造的にも安心して住んでいただけるような状態を保ちながら工事を進めていった。具体的には、耐震補強工事をしっかりと計算した上で実施し、また、一部柱が残る部分も目立たないように工夫した。
さらに収納に関しては、それぞれの個室に十分な収納を設けつつ、四畳半ほどあるウォークインクローゼットも用意し、ディナーコンサートなどで使用する衣装の専用室も作ることができた。理想的な間取りを実現し、収納の問題を解決したことによって、お客様に喜んでいただけるリフォームが実現できたように思う。
引き渡しが終わった数カ月後、亡くなられたご主人の三回忌に合わせて開催されたパーティーに、わたしたちもお招きいただいた。そこでは、大勢の人が集っても十分な空間が確保されており、お客様も笑顔になった。その笑顔を見て、お客様にご満足いただけるリフォームができたのだと、誇らしい気持ちになった。
後日いただいたメールには、「大勢の人が集まれる理想的な住まいを実現でき、本当に感激しました。夢が叶ってとても嬉しいです」と記されており、わたしも嬉しくなった。また、息子様からはライブに招待されるなど、素敵な人間関係が広がっていくことに、あらためてこの仕事の魅力を体感することができた。
リフォームは一人でできる仕事ではない。お客様はもちろん、社内のプランナーなどとも協力したり、議論を重ねたりしていくうちに、少しずつ理想的なかたちが作られていく。その中でわたしは、既存の建築理論やセオリーに捉われることなく、よりお客様のご要望を実現する方法を模索していきたい。
仕事を通じて得られたお客様との接点はすべて、重要な経験として、わたしの中に蓄積されている。個人的な人間関係が培われていくことも多い。わたしは一人一人のお客様に強い思い入れがあり、リフォーム内容も、どんな人だったかも、すべて覚えている。
リフォームは、人の生活を変え、人生を変える。そのような仕事に携わっている以上、強い思い入れを持つことに加え、責任感をもって仕事にあたることが大事だと思う。当然、お客様との人間関係も重視しなければならない。わたしはそのような意識を、自分の中できちんと持ちつつ、後輩らにも伝えていきたいと考えている。
仕事の中で生じる辛さや大変さも、お客様のご要望を真摯に受け止め、提案し、喜んでいただけたとき、楽しさに変わっていく。それもすべて、お客様との関係性あってこそなのだ。これからもわたしは、お客様とともに、一歩一歩、歩んでいきたいと思う。