TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
「リビングの大窓が開かなくなってしまって……」
温和な60代ご夫婦からそのようなご相談をいただいたのは、リフォーム博にご来場いただいたことがきっかけだった。当初は、築25年の住まいで水栓と給湯器の交換をしたいとのことだったのだが、打ち解けていくにあたり、大窓についてもお話いただいた。
「たぶん、東日本大震災が原因だと思うんです」
「なにせもう、何年も開けられないままですから……」
よくよくお話を伺ってみると、リビングの大窓はもう10年近く開けられていないとのこと。本来であれば、大窓を開けることでリビングだけでなく全体の風通しを良くし、空気を入れ替えることができる。しかしお客様は、どこか諦めている様子だった。
実際にその大窓を見せてもらうと、幅は2メートル50センチほど。また、高さも2メートル10センチほどあり、かなり立派なものであることが分かった。それだけに、室内環境を良好にするための役割も大きいことは明らかだった。
「これだけ大きな窓が開かなくなってしまうと……」
「そうなんです。採光はともかく風通しがなかなか……」
過去、何度か修理しようと考えたことはあった。しかし、業者から言われたのは、家を建て直すまではいかないものの、相当の費用がかかるとの回答だった。当時は、それならこのままでいいと断念し、10年という月日が経ってしまった。
「とりあえず、修理できるかどうかだけでも調べさせてください」
私はそう言って、ご夫婦を励ましながら、施工業者とともに現地調査を進めていった。だが、職人さんの見立てとしても、かなり厳しいことは間違いないそう。それでも私は、お客様の気持ちに応えたいとの一心で、諦めることなく話を進めていった。
その結果、サッシの上からサッシを被せる「カバー工法」によって、再び窓を開閉できるようにしつつ、キレイな状態を保てるとの結論が得られた。不安そうにするお客様を説得し、私たちは工事を進めていくことにした。
「どうぞ、安心して私たちにお任せいただければと思います」
「わかりました。ひとつ、よろしくお願いします……」
実際に工事が始まると、最初は、職人さんが2人がかりで窓を開けることから着手した。たしかに窓枠には若干の歪みが見られたものの、5センチ以内だったので、窓を設置することは可能であった。そこから、カバー工法によってサッシを取り付けていった。
工事そのものは、丸1日かけて無事に終えることができた。期待と不安を抱いていたであろうご夫婦の表情も、最初は心配そうであったが、徐々に明るくなっていった。工事が完了したときには、心から安心された様子だった。ご主人様が、その手で窓を開けてみる。
「ああ、諦めていたあの大窓が……」
「この度は、本当にありがとうございました」
大窓をリフォームすることによって、お部屋の雰囲気は大きく変わった。サッシの色も、周囲の色に合わせてコーディネートした結果、住まいそのものの印象が変わり、新しく生まれ変わったように見えた。
お引渡しを経てしばらくしたとき、ご主人様からメールをいただいた。
「大窓が開くようになって、私たちの生活は変わりました。風通しが良くなっただけでなく、結露もなくなり、断熱性や遮音性も高くなったんです。今では、もっと早く相談しておけば良かったとすら思っています。本当に感動しました」
そして、何より嬉しかったのが、お客様の暮らしがより良いものになったこと。
「窓を開けて、庭を眺めながらお酒を飲み、夕涼みをする。これまでは不可能だと思っていたそんな生活も、できるようになりました。夫婦ともども、心から感謝しています」
その後、春先にはご家族の方を招いてバーベキューを楽しんだとのご報告もいただいた。私はご夫婦の楽しそうな姿を想像し、あたたかい気持ちに包まれた。難しい内容でも、諦めずにご提案していくこと。積極的なチャレンジが、お客様の笑顔につながっていく……。