COLUMN
コラム
2020.07.11
先日、我が国で最大の漆喰のメーカーの社長に、漆喰についてのお話をじっくりお聞きする機会がありました。漆喰は、高気密・高断熱にこだわっている住宅会社が標準仕様やオプションで採用しているケースが多く、優れた内装材であることは何となく知っていました。 ですが、漆喰にとても熱い思いをお持ちの社長に、あらためて漆喰について詳しくお話を聞き、新築でもリノベでも、できれば漆喰を積極的に採用していくべきだなと思いました
漆喰とは、消石灰(水酸化カルシウム、石灰石を焼成・消化したもの)を主原料に、のり、繊維を添加した塗り壁材です。石灰石を高温で焼成したものというのが、漆喰の特性を生むポイントだそうです。
焼成することにより、壁として自ら固まる能力(自硬性)を有したうえで、長期間強アルカリ性を有しつつも、漆喰壁表面は水分を伴わない限り強アルカリ性を示さないそうです。これが漆喰の特性を生むのだそうです。
漆喰の主成分である消石灰(水酸化カルシウム)は、空気中の二酸化炭素を吸収し続け、100年くらいの長い年月をかけて石灰石(炭酸カルシウム)に戻るのだそうです。
漆喰は、優れた調湿性を持っており、室内の湿度を「ちょうどいい湿度」に保つことができます。室内の湿度が上がると、吸湿し、室内の湿度が下がると湿気を放出するのです。
ビニールクロスと漆喰仕上げ室内の調湿性試験のデータを見せていただきました。生活していると、キッチンで調理したり、お湯を沸かしたり、お風呂に入った入りすると、家の中の湿度が急激に上がります。そして換気等により急激に低下していきます。
この実験データによると、生活の時間により、室内の湿度は上昇・低下を繰り返していますが、室内の仕上げがビニールクロスの場合、この湿度の上昇と低下が非常に急激になっています。湿度が上がるときは、75%を超え、下がるときは45%を下回っています。
それに対して、漆喰仕上げの場合は、湿度の上昇と低下が緩やかで、かつ上昇しても75%を下回っており、下がる際も50%程度までしか低下していません。
アレルギーの原因になるダニは、部屋の湿度が75%以上になると、一気に増えるそうです。室内の仕上げを漆喰にすることで、ダニの繁殖の抑制効果もあるそうです。
もちろん、漆喰の吸湿能力は無限ではありませんから、適正な湿度を維持するためには、適切な換気が必要ですので、それはお忘れないように。
漆喰は、優れた防カビ性能も持っているそうです。
カビが発生するのは、カビの元となる胞子と呼ばれる原因菌です。これは、目に見えませんがいかなる場所にも無数に浮遊しています。それらの胞子が湿度・温度・栄養・酸素の条件が整う事によって一気に繁殖するわけです。
漆喰は、この要素のうちの湿度を吸放出することで、カビの発生を抑制する面があります。でも、それ以上に、漆喰の強アルカリ性という特徴が強い防カビ性能を発揮するそうです。漆喰は、石灰石を高温で焼成したものですが、この焼成等により強アルカリ性という特徴を持つようになるそうですそして、この強アルカリ性は殺菌作用を持つレベルで、結果的にカビの発生を抑制します。
ちなみに、同じように湿度を吸放出する室内仕上げ材として、よく比較されるものに、珪藻土がありますが、珪藻土は中性であるため、珪藻土自体にカビの抑制効果はないそうです。
漆喰とビニールクロス仕上げの空間試験で、湿度・温度等の条件をそろえて、食パンを使った実験では、5日後にビニールクロスの空間の食パンはカビだらけになっていましたが、漆喰仕上げの空間ではカビの発生はほぼなかったという実験結果も見せていただきました。
漆喰自体は、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因となるホルムアルデヒド等の揮発性化学物質(VOC)は揮発しません。
その上、家具や他の建築資材から放散されるホルムアルデヒドを吸着・分解し除去してくれるそうです。
シックハウス症候群は、一時期かなりの問題になり、2003年シックハウス対策が建築基準法の改正によりが強化され、建材に使えない物質が指定されました。ただ、規制対象物質は、欧州に比べるとかなり少なく、シックハウスの問題は完全になくなったわけではありません。
また、規制対象は建材だけであるため、家具にはまだ多くの有害な物質が使われているようです。これらの物質を吸着・分解・除去してくれるとなると、とても安心ですよね。
漆喰は、多孔質なので、生活の中で出てくる悪臭物質を脱臭してくれるなど、室内環境をなんとなく快適にしてくれます。
確かに、今まで経験した漆喰仕上げの室内空間は、何となく居心地がいいというか、快適なんですよね。それがなぜなのか、いままでわかりませんでしたが、このような性質も寄与しているのでしょうね。
漆喰は、間違いなくビニールクロスよりも高い耐久性を持っているようです。その上、手垢やちょっとした汚れならば、消しゴムできれいになり、醤油やドレッシングですらキッチンハイターをウエスにつけて拭くときれいになるそうです。
さらに、なにかものをぶつけたりしてひび割れなどを起こした場合も、DIYで修理できるメインテナンスキットがありますから安心ですね。
確かに、ビニールクロスに比べると、コストはかかりますが、生活空間が健康・快適に保たれるメリットは大きいです。それに、将来的なクロスの張替えコストを考えると、ライフサイクルで評価すると決して高価ではないのかもしれません。
新築・リフォームの際には、漆喰による仕上げも、選択肢に加えてみてはどうでしょう?