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TRUE STORY

実話から生まれたホームテックのポリシー

新しい住まいは「好きなもの」に囲まれて

新しい住まいは「好きなもの」に囲まれて

 「原因は、上の階からの水漏れだったんです」

 うなだれるようにして相談に来られたある女性のお客さま。その表情はとても暗く、私はひと目で落ち込んでいることに気が付いた。詳しく聞いてみると、マンションの上階から水漏れがあり、お客さまの部屋が水浸しになってしまったそう。
 私はその不運な事故に心から同情し、ぜひお客さまの力になりたいと強く思った。予算については保険で対応できる部分もあるとのこと。それより問題なのは、愛用していた家具が失われてしまったことである。
 「せっかくの家具ですが、あらためて買い直すことにします……」
 家族と過ごした大切な思い出を名残惜しそうにしながら、打ち合わせを重ねていくにつれて、徐々にお客さまの心は前を向きはじめていた。失われたものは戻ってこない。それなら、これまで以上の住まいを実現するしかない。私はいつにも増して、「いいリフォームにしよう!」と自分に気合いを入れていた。

 お客さまの希望としては、前よりオシャレな感じにしたいのと、飼っている猫が快適に過ごせること、加えてご自身の趣味や生活スタイルにあったリフォームを実現してほしいとのことであった。
 「工務店にお願いしようとしたら、あんまり良いプラン提案がなかったのよ……」
 「それでしたら、キャットウォークを付けてみるのはいかがですか?」
 「いいわね、それ!」
 プランナーの提案に身を乗り出すようにして反応を示すお客さま。その表情は、前よりもはるかに明るくなっている。きっと、大切な猫と一緒に、素敵な時間を過ごしている様子を想像されたのだろう。
 私たちは、お客さまにもっと喜んでもらうべく、パースに猫の絵を入れてみたり、内装には好みの象柄クロスを用いたりなど、ワクワクするような提案を続けていった。それだけでなく、趣味のマンガ本を並べるコーナーをご自身で作りたいとのことだったので、そのためのスペースも用意することにした。

 すると、お客さまはどんどん前のめりになり、最初の頃の落ち込みは徐々になくなっていった。お客さまの表情がみるみる明るくなるのを目の当たりにして、私はリフォームを絶対に成功させたいという気持ちになっていた。
 「ああ、なんだか、リフォームするのがとっても楽しみになってきたわ!」
 リフォーム工事が始まると、お客さまは何度か現場に足を運んでくれた。訪れたときには、職人さんたちに栄養ドリンクを差し入れするなど、とても気さくに振る舞ってくれた。そして来る度に、変わりゆく部屋に驚いていた。
 「あんなに凸凹だった壁が、こんなにキレイになってる!」

 工事は順調に進み、無事、引き渡しのときを迎えた。広々としたリビングと、猫が自由に遊べるキャットウォーク、そしてマンガ本を並べる本棚、オシャレなダウンライト、掃除がしやすいユニットバス。
 「あのお部屋がこんなに明るくなるなんて……」
 リフォーム後の生活は、お客さまが好きなものに囲まれていて、理想の生活を実現できることがベストである。そう考えて積み重ねてきた提案の数々が、面白い形になった。それは、象柄クロスのポーチであった。
 猫を飼っていることからも、お客さまが動物好きであることは明らか。その中でも、とくにお気に入りだった象柄のクロスと同じ柄のポーチをプレゼントしたのである。お客さまは驚きつつも、満面の笑みを浮かべていた。
 「この度は、本当にありがとうございました」
 私は、元気になったお客さまの姿と、見違えるようなお部屋を見て、この仕事のやりがいと喜びをあらためて実感した。その傍らでは、猫が満足そうに寝そべっていた。

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