TRUE STORY
実話から生まれたホームテックのポリシー
「家事がしやすい住まいにしたいんです」
ちょうど1年半ほど前のこと。30代のご夫婦から、ご自宅のマンションをリフォームしたいとのご相談をいただいた。小さい女の子がふたりいる4人家族で、ご夫婦は共働き。そのため、スムーズに家事ができる住まいを希望されていた。
そのマンションを所有しているのは奥さまのご両親。このほど、空いていた部屋を改装して移り住むとのことだったのだが、問題はお部屋の広さ。40平米より少し小さいスペースに部屋が3つもあったため、使い勝手を良くする必要があった。
「共働きなので、朝の支度や夕方の片付けをできるだけ効率良くしたくて……」
「それとやっぱり、子どもたちが喜ぶような住まいにしたいですね」
そう話す奥さまは、とてもハキハキされている明るい方。笑顔がステキなご主人さまはとても優しそう。けれど、共働きで忙しい中、子育てと家事をこなさなければならない日々は、とても大変そうだった。できる限り、効率的に過ごせる住まいを実現しなければ。
「それでしたら、2DKから1DKに変更してみてはいかがでしょうか?」
「なるほど。それならお部屋が広くなりますね」
もともとあった和室をなくし、壁をとってダイニングとつなげて、ひとつのお部屋にする。そうすることで、家族みんなで過ごせる広々としたリビングが実現できる。そのうえで、家事の動線をつくることを提案させていただいた。
「あとは、水回りを工夫してみてはいかがでしょうか?」
「水回り、ですか……」
「はい。キッチンと脱衣所・お風呂場をつなげるだけでも移動が楽になりますよ」
リビングが広くなっても、移動がしにくければ家事の負担は軽減されない。そこで、作業が多いキッチンと脱衣所・お風呂場をドアでつなぎ、廊下も含めてぐるりと回遊できるようにする。それだけでも、移動の手間が少なくなる。
「それはいいですね!」
「あとは、朝の準備も効率よくしたいなぁ」
限られたスペースを効率よく使うために、ポイントとなるのは収納。収納を上手に活用すれば、部屋をスッキリさせつつ、一定の空間を確保できる。そこで、玄関先の廊下にそれぞれの棚(ロッカー)を用意し、朝の準備を効率よくできるようにした。
「ここに着替えやランドセルなどを置ければ、朝の準備が楽になりますね」
リビングのデザインは、黒やネイビーを基調としたシックな雰囲気に。一方、寝室はお子さんが好む明るくて可愛い、女の子らしいお部屋になった。壁に大きなホワイトボードやぬいぐるみの収納スペースを設置するなど、遊び心も加えられている。
遊び心と言えば、窓枠の上につくった「ベアブリック」の陳列スペース。ここなら、子どもたちにイタズラされる心配もない。もともとご主人さまが集めていたものなのだが、希望を叶えられてとても喜んでいただけた。
「問題は、洗濯機をどこに置くか……」
室内のスペースを確保すると、洗濯機を置く場所が問題になる。最終的には、洗濯カゴのみ洗面所に置き、本体をベランダに置くことで解決できた。また、デッドスペースになりやすい柱の側にはテーブルを設置し、子どものお絵かきコーナーを作った。
「お絵かきコーナーの壁紙はどうしましょうか?」
「それが……。娘はこれがいいんですって」
その壁紙は、ハリーポッターのような本がたくさん並んでいる、オトナが好みそうなデザインであった。ご夫婦ともにクールなデザインを好むことが、娘さんにも影響したのかもしれない。そのためリビングは統一感のある空間となった。
工事中、奥さまが下の子を連れて、何度か見学に訪れた。行く度にお部屋が変わっていく様子を見て、とても楽しそうにしていたそう。さらにはこんな発言も。
「将来は、リフォーム屋さんになりたいなぁ」
新しい住まいには、その、天使のような笑顔が輝いていた。